日常生活でできる感染症予防
~おもに呼吸器感染症について(風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスなど)~

日常生活でできる感染症予防 ~おもに呼吸器感染症について(風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスなど)~ 表紙画像

関節リウマチで治療されている患者さんに、「日常生活でできる感染症予防」をご紹介します。

監修:
独立行政法人地域医療機能推進機構玉造病院
感染管理室看護師長/感染管理認定看護師
石倉 淳子

はじめに

関節リウマチは、自己免疫疾患じこめんえきしっかんといわれる病気の一つです。
免疫は、体の外から入ってくる異物を排除して自身を守る働きです。それが自己免疫疾患の方では、免疫が誤って働いていて、自身のからだを敵として攻撃してしまいます。
関節リウマチの症状を軽くするため、病気の進行を防ぐために、免疫の働きをおさえる薬が使われることから、関節リウマチの方では、感染症への注意と対策が重要です。

特に、感染症が広がっている時期などは、日常生活に様々な影響があったり、不安や恐れを感じたりするかもしれません。
体調の変化や、治療について不安がある時は、ご自身で判断して行動せず、かかりつけ医などに相談してください。

感染症の予防や対策には、日頃の手洗いや健康管理などがとても大切ですので、手洗いの具体的な方法や生活上のポイントなどをまとめたガイドを作成いたしました。ぜひお手元において、関節リウマチの患者さんやご家族の感染予防に活用いただけることを願っております。


普段から気をつけること

感染を疑う症状

  1. 熱やせきなど、かぜの症状
  2. 強いだるさや息苦しさ
  3. においや味を感じない

感染症が疑われる場合、使っているお薬をいったん止める・減らす・延期する、などの調整が必要になることがあります。かかりつけ医の先生に伝えて治療について相談してください。

確認しておくこと

感染症をはじめとして、いつもと違うと感じた時にはどうすればよいか、普段からかかりつけ医とよく話しておきましょう。

使っているお薬や治療内容が書かれているカードなどをもらっている場合は、かかりつけ医以外の医療機関で治療を受ける時のためにそなえておきましょう。

必要な治療を受けましょう

  • 関節リウマチやほかにもっている病気の治療は、ご自身で判断して飲み薬や注射薬をやめたり、量や回数を調整したりしないことが大切です。
  • 毎日体温を測り、いつもと違う症状がないか確認して、体調に変化があれば相談しましょう。
  • インフルエンザや肺炎球菌など、必要な予防接種についてはかかりつけ医と相談して受けておきましょう。ただし、使っている関節リウマチのお薬の種類によっては、一部のワクチンの接種(風しんワクチンなど)ができないことがありますので、ワクチン接種については必ずかかりつけ医に相談しましょう。
POINT

食事や就寝・起床の時間など、一日のリズムをととのえましょう。バランスよい食事や十分な睡眠、気分転換も大切です。
季節の変化によって、お部屋の温度・湿度の調整や、熱中症への対策・水分をとることなども気をつけましょう。


感染症予防のために

こまめに手洗い・うがいをしましょう

ウイルスを含むしぶき(飛沫ひまつ)や、ウイルスがついた手や指が口、鼻や目の粘膜に触れることで感染が起こります。手や指についたウイルスは洗い流すことが最も重要です。洗っていない手で、口や鼻、目を触らないようにしましょう。
また、身の回りのものや、手がよく触れる場所をこまめに消毒・除菌することで、手指につくウイルスを減らすことが期待できます。

手洗いする時

  1. 外から帰った時
  2. 外出先でものを触った後
  3. せきやくしゃみをした時、鼻をかんだ時
  4. 調理・食事の前と後
  5. マスクに触れた後
  6. トイレの後
手洗い、アルコール消毒のしかた
お口のケア(歯磨き、うがいなど)の重要性

口の中の細菌が、インフルエンザウイルス増殖に関わっていることがわかっており、お口の丁寧なケアは感染防止にとても重要です。歯みがきやうがいをこまめに行い、口の中を清潔に保ちましょう。

感染しやすい環境をできるだけ避けましょう

  1. 人ごみは避ける
  2. 換気をする
  3. 人との距離をとる

石けんと流水で手を洗う時

  1. 手洗いの前に…
  2. 1 流水で手をよくぬらす
  3. 2 手に石けんをつける
  4. 石けんを選ぶ時に…
  5. 3 手のひらを洗う
  6. 4 手の甲を洗う
  7. 5 指先を洗う
  8. 6 指と指の間を洗う
  9. 7 親指を洗う
  10. 8 手首を洗う
  11. 9 十分な水で流す
  12. 10 水分をふき取る
  13. 手を乾かす時に…

関節の痛みや変形等により十分に手洗いができない場合は家族に手伝ってもらう、除菌シートでふき取る、などもよい方法です。

手洗い後に汚れが残りやすい場所

手をアルコールで消毒する時

  1. 1 手のひらに消毒液をとる
  2. アルコールを選ぶ時に…
  3. 2 指先と爪の間に液をすり込む
  4. 3 手のひらにすり込む
  5. 4 手の甲にすり込む
  6. 5 指と指の間にすり込む
  7. 6 親指にすり込む
  8. 7 手首にすり込む
POINT

手や指に症状があって洗いにくい方は、アルコール消毒液の方が使いやすいかもしれません。ただし、目に見える汚れがついている時、トイレの後、体液がついている時などは、石けんと流水で洗いましょう。
アルコールは、スプレー式やクロスなど、携帯時に便利な製品もあります。外出の時には携帯しておくとよいでしょう。

スキンケア

手が荒れて傷ついていると、感染の危険が大きくなりますので、保湿も大切です。石けんで洗った後に、さらにアルコール消毒液を使用する必要はありません。

マスクのつけ方&注意点

マスクだけで感染症が予防できるということはありませんが、手洗いをきちんと行ったうえでマスクを着用することで、感染症にかかるリスクをより低くできたという研究があります。
マスクをつけている間は、口や鼻に手指が直接触ることを避けられます。
また、関節リウマチの患者さんの中には、口の中が乾燥する症状がある方もおられますが、マスクをつけることで保湿の役割も期待できます。

マスクをつける時

自分の顔にフィットするマスクを選びましょう。マスクは清潔にして、正しく扱いましょう。

  1. 1 しっかりと手洗いする
  2. 2 鼻の形に合わせてすき間を作らずにマスクを当てる
  3. 3 ゴムひもを耳にかける 鼻あてを片手で抑えながらマスクを下に伸ばしてあごを包むように覆い、フィットさせる

マスクをはずす時・ずれを直す時

  1. ゴムひもだけを持ってはずす
熱中症対策

暑い中でマスクをつける時は、熱中症に気をつけましょう。
マスクをつけていると、体温調節がしづらくなります。また、口の中がうるおうことで、のどの渇きに気づきにくくなります。
強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分をとりましょう。
周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも大切です。

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